マツノヒデマサの温泉巡浴

 福島県郡山・三春、温泉巡浴記
2005年7月3日〜4日

 2005年7月3日(日)仙台・松島観光に行くお客様のバスを見送ってから、自家用車で郡山へ出発する。天候は曇りで、ところどころ雨の予報だ。今回は三春にガンに効くすごい温泉があるとの噂を前から聞いていたので、1週間ほど前に部屋の空き状況を聞いたら、8人部屋で欠員が出た、との話に仕事の予定を確認して、翌日電話を入れたらもう満室だった。2日前にもう一度電話を入れたら、空いていたので今度は即予約を入れた。それほどにガンなどの難病を抱える人達が年に30万人も殺到する温泉場らしい。

     
               
郡山温泉 ちいさな玄関だが

 ついでにその周辺の温泉を巡浴しようと言うのだ。東北自動車道郡山南インターで降り、源田温泉に向かう途中、高速道路脇の梨・ぶどう畑に囲まれた田園地帯に「郡山温泉」の看板に気が付いた。遠くからも見える大きな建物で、正面は小さな玄関だが奥に新館が裏に続いている。入浴料が300円とは安い。浴槽は3m×6.5m大きいが露天風呂は小さい。遠赤外線低温サウナもある。毎分700gの湯量をもつ41.8度のアルカリ性単純泉で加熱循環、塩素臭がする。効能は神経痛、リウマチ、胃腸病、運動器障害、疲労回復など。
浴槽
 
 湖南通りを西へ10kmほどすすむ。「源田湯バス停」を左折、三森峠麓の山中へ700m入る。赤松林を過ぎると源田温泉熊田屋旅館だ。昔から「子授けの湯」「東北第一の脱腸(ヘルニア)の名湯」として知られていた。広い敷地にログハウス風の玄関でんとある。玄関は平成7年に建てられたとか、創業は明治の初めで主人の熊田広治さんは4代目という。

    
               
源田温泉熊田屋旅館 

歴史は古く約800年前、源義家が欧州征伐に出向いた折に発見し、傷ついた兵士の療養に使ったという由来から、「源田の湯」と名付けた。29度の単純温泉で、無色透明、塩素臭は感じられない。浴室や浴槽(3m×2m)は滑りにくい青石で気持ちが良い。
 効能はヘルニア、腰痛、神経痛、リウマチ、婦人病、冷え性など。五十肩や関節痛など身体に痛みのある方によく効くという。湯治客対応の4.5畳、8畳などの小部屋があり、長期滞在客にやさしい宿だ。1泊2食付きで6,500円から、3泊8食付15,000円。

浴室

 
 直ぐ西に井戸川温泉の看板があり、急遽立ち寄る。昭和46年の創業で、まだ新しい旅館だが、平成16年4月に温泉分析で温泉の許可を取ったようだ。

井戸川温泉

浴室
入湯料は500円。浴室は新しく、無色透明で肌につるつる感がある。21.5度のカルシウム・ナトリウム−硫酸塩化物泉で加温・掛け流しで、塩素臭が無い。無色透明、かすかに硫化水素臭あり。多田野川を望む露天風呂もあり、外は雑木林で開放的。
 効能は、神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、打ち身、くじき、動脈硬化症、慢性皮膚病など。
 売店に土田農園の朝取り野菜が販売されている。1籠100円とか、竹の子の若木のような「はちく」も販売される。
朝採り野菜

 
 さらに西へ行くと休石温泉太田屋旅館がある。道路から川へ下ったところに原生林の中の一軒宿で、源義家がここで愛馬の足を洗わせ、石の上で休ませたという開湯伝説がある。

     
                 
休石温泉太田旅館 

入湯料は300円。浴室はタイル張り、浴槽は扇形。加熱・掛け流し。無色透明、かすかに硫化水素臭がする。29.5度の硫酸塩泉で効能は、眼疾患、神経痛、胃腸病、慢性皮膚病とくに水虫、婦人病、火傷、切り傷など。駐車場は裏手にあり、そこからは茶褐色の川原が見える。きのこ料理や鯉の名物料理がある。
 太田屋の女将さんにおそばの美味しいところは無いか?と訪ねると、「下ったところにあるわよ」との教えに従い、車で5分のところの道路沿い右側にある蕎麦屋に入る。結構賑わっていた。十割手打ち蕎麦で「辛味おろし蕎麦」を頼む。うん、これは美味しい。

浴室はタイル張り

 
 もう一ヶ所と守山温泉七海荘に向かう。郡山市南郊にある守山温泉は、昭和25年に井戸を発掘中に発見された。大きな岩盤に守られたかのような地盤に、南北朝時代戦乱のゆかりの水かとの話題もあった。2軒あるうちの七海荘に立ち寄る。民家風の玄関で、入浴をお願いする。浴室は母屋の古さに反して、石・タイル張りの三方を窓で囲まれた明るい湯舟だ。レンガ積み風の壁に海中の魚達の絵を描いた銭湯ばりのタイル絵が描かれている。ラジウムを含む12度の単純泉でラジウムはマッハ9.84、効能は創傷、神経痛、リウマチ、胃腸病、痔疾、痛風、動脈硬化症、高血圧症など。私が湯舟から出ると、年配の男性客が入ってきた。そのうちに年配の女性が入ってきた。そうか、浴槽が男女別ふたつあるが、客が少ないので湯舟は1ヶ所のみの営業で混浴ということか。
 女将さんは「湯治のお客様が来てくださるので、できる範囲で細々とやっています。田畑があるのでほとんど自給自足で用が足ります」たしかに田園地帯の自然豊かなこの地で暮らせば、ストレスも無く病気も治ろうというものだ。
 米を持参で宿で炊いてもらい、1泊2食・寝具付き(味噌汁・お新香・おかず1品)で3,000円、浴衣は持参。

守山温泉

明るい湯舟

 
 いよいよ最後は目的の三春にあるみちのく霊泉やわらぎの湯へと向かう。北上して30分で到着した。磐越自動車道船引・三春インターだと10分の距離だ。鉄筋4階建ての宿泊施設で、駐車場の整理の方が案内に忙しい。まず1階のフロントでチェックイン。 お部屋やお風呂・岩盤浴の説明を受け、宿泊料7,500円とござ代金700円を先払いする。夕・朝食券を受け取る。2階のラジウム岩盤浴場上の8人部屋に案内される。部屋には8人用のお布団が用意され、私以外の布団はすでに壁に頭を向けて敷かれている。お隣の方に荷物の整理棚を教えていただく。部屋の隣は休憩室?懇談室で、入り口の箱には、それぞれの名前が書かれたござが丸めて立てかけられている。 早速岩盤浴の説明を受けに1階の岩盤浴受け付けで、星野せつ子さんの説明を受ける。私は「蓄膿症・アレルギー性鼻炎、高血圧症で耳鳴り、目が悪い」というと、「では岩盤浴場の床に穴があるので、そこに顔面を当てるように工夫したらいいですね」と助言をしてくれた。そこでござを受け取り、自分の名前「あなたをまつの」と記入した。いよいよ岩盤浴を体験する。宿泊者は岩盤浴を何回利用しても無料だが、日帰り入浴者は1回500円かかる。
鉄筋4階建ての宿泊施設

岩盤浴受付で 

室内岩盤浴場

1階フロアの大浴場に
 
 三春町に「みちのく霊泉やわらぎの湯」が開湯したのは平成4年(1992年)で、それ以前から建設業を営む影山勝夫氏が恒例の成田山参拝の折、「敷地内から水が湧き、お前を助けてくれる」との不動明王のお告げの声が聞こえたという。それから5年後、ここには水が出ないといわれた敷地に駐車場の整地をしていると突然水が湧き出した。その水が日本でも有数の三朝温泉の2〜3倍もの濃度のラジウムを含む温泉水とわかった。その後、影山ご夫妻自身の自動車事故での肋骨骨折の温泉治療で異常な速さで回復したことをきっかけに、温泉浴場を町民に提供した。さまざまな難病がこの水で回復していることを目の当たりにして、本格的な温泉療養施設経営に踏み切った。オープン1年半で利用者は1万人を超えた。平成8年(1996年)4月、着物を着たままで入浴できる方法を念じて、ラジウム線を直接浴びることのできる室内岩盤浴場を完成させた。翌年8月、第二岩盤浴場も完成した。いまや年間30万人の難病を抱える人達が入浴に訪れている。
 
 室内岩盤浴場は、小さいほうがラジウム濃度の強い側と弱い側とにそれぞれ2列×8列で32人分、ほかに板の間が3人分ある。強い側は10分間、弱いほうに30分間合計40分が1回の基準だ。200円で借りた浴衣に着替え、ペットボトルに入れた温泉水とタオル、ござを持ち入場する。希望位置の穴が見つからず、無視して自分の場所を決める。穴の箇所は通常の8倍から12倍のラジウムが放射されていて、患部に当てるとより効果的だそう。竹を割った枕をしてじっと寝転ぶ。10分もしないうちに汗がだらだらと流れる。弱いほうに移動して、未だか未だかと始終時計を見ながら、何とか40分我慢したがとても辛いものだ。
汗だくの浴衣を着替えて、今度は1階フロアの大浴場に移動する。入り口には飲泉所があり、ひっきりなしに空きペットボトルに汲みに来る。御影石造りのキレイな浴室だが、石鹸・シャンプーが持参の規則だったらしく、掃除に来たおばさんに尋ねると「ちょっと待って。今持ってきてあげるから」とお客が忘れていったシャンプーを貸してくれた。湯舟は無色透明で約43℃に設定されていて、とても熱い。でも岩盤浴で熱い思いをした後なので、爽快な気分だが、わずかに塩素臭がある。大浴場は男女別なので午前8時から午後10時までいつでも入浴できる。宿泊者にのみの入浴施設でほかに岩盤浴場の上に展望風呂がある。
飲泉所  
男女別時間交代制で午前6時から50分間隔で7時から男性で、奇数時間が男性、偶数時間が女性といった具合だ。木造の立派な浴槽だが、これがとても熱い。46℃の設定で入り口の注意書きには、水で薄めても44℃以下にはしないでください、とある。7〜8人入浴中の年配の男性達は、湯舟の周りに座り込んで、とても熱いので湯を手ですくいぱちゃぱちゃ肌に湯をかけている。水を蛇口からどんどん出しているが、なかなか温くならない。思い切って入る人もわずか10秒足らずで出てしまう。何でこんなに熱いのか?何か理由があるのかね?と私はフロントに訪ねると、翌日社長が5時30分から岩盤浴フロントにいるので直に聞いてくださいとのこと。8人部屋に戻るとこのことが話題になり、それぞれ持論を言い合う。
展望風呂
「今朝女性の時間の後で直ぐに行くと、とても汚れていた、適温にすると湯の汚れがひどくなるから、衛生上熱くしていつのでは」とか「ガン細胞は42℃くらいで死滅するそうだから、その関係で熱くしているのか」さらには「高齢の患者は、皮膚感覚が弱くなっているので、温度感覚が鈍っていて江戸っ子じゃないけど、熱くしないとだめだという人が多いのでは」という声も出た。それではと翌日、社長に質問をしてみた。社長いわく「当初は42℃くらいにしていたら、ガンの患者から、こんな温くては病気が治らない、もっと熱くしてくれと言われ、今の温度になった。42℃にして欲しいというのは、健康な人のいうことだ。それに抵抗力を喚起する為に、温熱ショック療法効果をも期待している。」と発言していた。
休憩所
 私ら8人部屋の人たちは、京都から来た2月に前立腺がんが判り、7月の手術を控えて治療にきた方、茨城からガン手術後の治療に定期的に来ている人たちなどガンの患者ばかりだ。中にはガンに効能があるといわれる秋田県の玉川温泉や岐阜県のローソク温泉に湯治に行ったことのある人もいた。

 夕食は食堂で5時30分から始まる。バイキングで鮪・蛸・海老のお造り、ナスの味噌和えやレンコン・蕗・鰊和えなどの煮物、コロッケなどの揚物、マーボー豆腐、とろろ芋、各種サラダなど40種はあろうか。デザートにバナナにメロン、牛乳にコーヒーも。生ビールも頼んだ。相席同士で話も進む。話題は自然に病歴のことになる。午後7時頃になると品薄になり、食べるものも少なくなる。翌朝の朝食は7時30分から9時までのバイキングとなる。

 
 翌日の岩盤浴は5時30分からで、順番待ちが大変と聞き、先輩に教えられ、朝3時30分に目覚めた時に、自分のござを第二岩盤浴場の前に順番とりに行った。すでに一番乗りがいて、私は2番手だった。第二岩盤浴場は湿度が高く、汗がよく出る。我慢ができずに濃度の濃いほうに10分、弱いほうに20分の合計30分で出てしまった。皆、自分の体調と相談して、時間の調整をしているようだ。

ポリ容器に入れたのを購入
帰りにラジウム温泉水をポリ容器に入れたのを購入した。宿泊者はポリ容器を800円で買い、温泉水は無料だが日帰り入浴者は温泉水代として500円支払う。
 日帰り入浴者も続々と押し寄せ、休憩所もいっぱいになる。がん患者にどのような効能があるかは、二見書房発行の医療ジャーナリスト田中孝一著「私たちは『やわらぎの湯』でがん・難病を治した」に詳しい。がん、アトピーからリウマチ、脳梗塞後遺症、胃潰瘍まであらゆる難病に効果があるという。湯治客から体験記が寄せられ、施設のあちこちに掲示されている。

 やわらぎの湯の大浴場や展望風呂に使われるお湯は、ラジウム泉を沸かしたもので、温泉分析書ではラドン含有量が302.5で、三朝温泉の含有量は、100.0で三朝温泉の約3倍の含有量であり世界有数の数値である。岐阜県のローソク温泉に比べ湯量が豊富で、秋田県の玉川温泉に比べ岩盤浴が屋内でできること、玉川温泉や増富温泉の温泉水に比べ温泉水が飲みやすいことなど「やわらぎの湯」の優位性が目立っている。(2005.7 松野ヒデマサ記)


Copyright (C) 2000 A Spa Service All Rights Reserved

旧中山道を歩く旅  旧東海道を歩く旅 
温泉水サーチ 飲む温泉水オンラインショップ 

会社案内