海外巡浴珍道中マツノヒデマサの温泉旅日記
2006年8月8日〜15日 


ドナウ川くさり橋(ハンガリー政府観光局提供)
中欧ハンガリー オーストリア チェコ巡浴紀行

その1 ハンガリー
 ハンガリーは温泉天国で知られ、全国に100ヶ所以上、1300ヶ所の源泉、首都ブタペストには源泉が184ヶ所と38ヶ所の浴場がある。古代ローマ時代に征服された2000年前にローマ人によって造られた公衆浴場跡が21ヶ所発掘されている。オスマントルコ時代の16〜17世紀にブタペストのキラーィ温泉、ラーツ温泉、ルダッシュ温泉などトルコ式浴場が本格的に建設された。当時は貴族達の社交場として賑わっていたという。現代は健康のための水中運動、療養、保養などを目的とした特徴ある施設となっている。



アールヌーヴォー建築の
ゲッレールト温泉


ジョルナイの泉


温泉浴槽
※写真提供:
ハンガリー政府観光局


ホテル中庭


マーチャンシュ教会


英雄広場


欧州最大規模の
セーチェニ温泉


温泉名物チェス
※写真提供:
ハンガリー政府観光局


個人浴槽












     
 8月8日温泉王国ハンガリーに到着。本日の宿泊ホテルはドナウ川にかかる有名なくさり橋からさらに南3つ目の橋・べトゥーフィ橋の東端にある「メルキュール ブタペスト ドゥナ ホテル」ゲッレールトの丘の下にある温泉・ゲッレールト温泉は、周辺5km以内にいくつもの温泉があり温泉巡りには絶好な場所だ。営業を調べると早朝6時〜6時30分から行う温泉地が多い。

1ヶ所目 ゲッレールト温泉

 8月9日ゲッレールト温泉の営業時間6時に合わせて午前5時起床。中央市場前を走り、自由橋を渡り、わずか10分、5時30分に着いてしまう。ドナウ川に面した正面には青い円錐形の頭部からいくつもの温泉湧出口から湯が注がれる「ジョルナイの泉(温泉)」がある。風が強く半そでではまだ寒い。ドナウ川に向かって太極拳ならぬ自彊術(じきょうじゅつ)体操をやって体を温める。
 ゲッレート温泉は1914〜1918年にかけて建てられたアールヌーボォー様式の宮殿のような豪華な建物で、ホテルが併設している。北側の温泉専用入り口には、入浴目的の人々が並び始めた。入り口は自然の洞窟のようなデザインだ。受付で入場券を購入するが、外国人は我々だけで、他の人たちは皆手に青い書類を提出していて、受付の2人の女性がチェックして確認のスタンプを押している。療養目的の健康保険適用の手続きらしい。入場料を一人2500F(フォリント:100フォリント=約60円)支払った。館内は吹き抜けの高い天井とステンドグラス、石膏像なども飾られて、結婚式場にも使われるといういかにも社交場という雰囲気だ。ロッカー代をさらに500F支払う。
 シャワーを浴びて、いよいよ室内温泉プールへ。温泉プールは26度で寒い。左隅の温泉浴槽は36度で暖かい。温泉プールは10m×25mもあり、柱や2階のプールサイドの装飾も素晴らしい。中央天井は採光開閉式か半分空が見えている。温泉は10ヶ所以上の源泉から引かれた弱アルカリ性温泉。効能は腰痛、筋肉痛など。無色透明でかすかに硫黄臭がある。
 温泉浴槽でしばらく入浴した後、裸で入る温泉を探しに行く。裸入浴で男ならふんどし、女ならエプロンも用意しているという温泉があるはずだ。男性用はブルーや金のモザイクが使われた華やかな造り、女性用は大理石の床、新緑色の装飾タイル張りの浴室でサウナと水風呂もあるという。階段を登って2階のプールサイドから外へ出るとホテルの中庭に出る。屋外には波の出るプールや各種の薬湯、泡風呂、屋上に日焼けテラスもあるというがそれも見当たらない。早朝なのでまだ屋外のプールは開業していないのかも知れない。男女別温泉もとうとう発見出来ずやむなく断念してホテルに戻ることにする。2時間以内の利用の場合は、帰りに入場料が300F戻される。

2ヶ所目 セーチェニ温泉

 8月9日ゲッレールト温泉から戻って朝食の後、市内観光。ゲッレールトの丘、王宮の丘、マーチャンシュ教会、英雄広場を見学する。昼食後はフリータイムとなり、セーチェニ温泉へタクシーで向かう。渋滞のため通常なら10分で着くはずが90分もかかった。
 セーチェニ温泉は市民公園の一角にある。ヨーロッパでも最大規模といわれ中心部の宮殿風の建物は1913年、プールと健康センターは1927年の建設という。
 いよいよ入浴。入り口は3ヶ所あるようだ。キャビン個室利用で2300F。階段を登って鍵係りのお兄さんにキャビンを開けてもらい着替えをする。「その下の階段を下りて」と彼が指差すのに従っていくと、タイル張りの温泉浴槽の数々にびっくり。浴槽の数が15ヶ所(水着着用混浴8ヶ所、男女別裸入浴4ヶ所)他に大温泉プール、イミングプール、レクレーションプールがある。温度差のある温泉浴槽に5ヶ所ほど浸かった後、温泉プールを探す。温泉療養目的のお客もあるようで、若いインストラクターの指導で水中運動をやっている場面にも出会った。温泉浴槽を戻って、さらに階段を下りた所が大温泉プール、と迷子になりそうな規模だ。これは凄い。
 バロック大宮殿の内部に3つの大プールがある。両側の暖かいプール(32度、38度)は動きがみな鈍い。温泉に浸かるという感じ。中央のプールは泉温が低く、夏は26度、冬は28度という。泳ぐには水泳帽子が必要。有名なセーチェニ温泉名物のチェスは中央プールの降り口のところにチェス盤を置く台が作られている。ここに盤を1台置き、ただ黙々と指している。天候に恵まれて青空に豪華な建物がよく映えて、華やかで美しい。マイナス10度の冬の厳冬期でもチェスに興じる人がいると本で読んだことがある。写真は禁止らしく、わずかに携帯カメラで撮っている姿を1度見ただけだったが、何とか記念に撮りたいと、キャビンに戻り、タオルとデジタルカメラをカラー袋に入れ、プールに戻った。お客が少ない場所の柱影から、ときどきサッとカメラを取り出し撮影をする。水着を着ているのだから、いいだろうと思うのだが・・・。
 地下970mから湧出する源泉76度のセーチェニ温泉の泉質はナトリウムを含むカルシウム・マグネシウム・炭酸水素系硫黄温泉で、フッ素化物とメタホウ酸も含む。効能はリウマチ、関節痛、筋肉痛、腰痛、婦人病、事故後のリハビリなど。飲泉もでき、胃腸障害、肺機能改善、病気予防などに効能が期待される。無色透明でわずかに硫黄臭がする。営業時間は6時〜22時と他に比べると長い。見ることが出来なかったが、公園の一角で飲用温泉水も1リットル35Fで販売され、容器持参で来る人も多い。帰りに2時間以内の利用者に800F払い戻される。

3ヶ所目 ルダッシュ温泉

 8月10日4時30分起床。5時30分、フロントでシティタクシーを呼んでもらい、くさり橋から南へ1個目の橋、エルジェーべト橋の西端にあるラーツ温泉へ向かってもらうが改装工事中。次に手前のルダッシュ温泉へ行ってもらう。ドナウ川畔にあるブダ側ゲッルート丘の岸壁に隣接するピンク色の建物だ。まだ6時前なのに10人ほど並んでいる。受付で温泉(キャビン付)2000F支払う。地元の人達は、ここでも青い書類を手に持っている。右手に温泉、左手はプールになる。温泉の入口でチケットを示し、手すりにかかっている白いふんどしを持ってキャビンで着替える。
 主浴槽はとても広いが薄暗い。トルコ式のドームで覆われ、プラネタリウムのような明かりが点在して、神秘的な雰囲気だ。浴槽は中央に八角形の浴槽でかなり深い。浴室の四隅には三角形の温度差(28度、30度、36度、42度)のある湯船がある。壁に接した湧出口から出る源泉は、薄褐色のような色で口に含んでみると鉄・硫酸の味がする。お客は皆静かに入浴し、二人連れの客も小声でひそひそと話す感じだ。隣接して、霧状の50度のサウナがあり、奥の部屋はもっと熱い。水着着用の温泉プールとは明らかに異なり、保養・療養目的に相応しい温泉だ。   
 飲泉をしたり、個人浴槽があり、隣には休憩用の白いベットルームもある。館内はやはり写真撮影禁止のようではあったが、誰もいない個室があったのでこっそり撮影する。しかしフラッシュが光った瞬間、若い係員が駆けて来たので、慌てて逃げることとなった。
 水着での温泉入浴は水着が体に張り付いて気持ちが悪いがやはり裸はいい。ふんどしでも余り気にならなかった。地元の人たちは皆ふんどし姿だった。ルダッシュ温泉は、16世紀以来の歴史があり、1566年、パシャ・ムスタファによって建てられた。こうしたドーム型の浴槽が主流らしく先に行ったラーツ温泉も同じトルコ式だ。こちらはオペラ座を設計した建築家イブル・ミクローシュがデザインをしたという。ルダッシュも最近改修したらしく、清潔で新しく気持ちが良い。最近まで温泉は男性のみだったが、改修後女性も火曜日のみ利用できるようになった。プールは水着着用で男女とも利用できる。
 泉質は16度〜40度のカルシウムを含むカリウム・マグネシウム・炭酸水素硫黄泉でフッ化物イオンと微弱な放射能も含有する。入浴で関節痛、腰痛などに効果があるという。飲用には胃腸病や腎臓病に効果的だそうだ。
 温泉を出て、2時間以内の利用の場合は700Fの払い戻しがある。反対側のプールに行きたいとジェスチャーで伝え、水着に着替えて1000Fを支払う。25mプールが5〜6本くらいの広さで、10人ほどが悠々と泳いでいる。私もプールに入るが中央に行くとだんだん深くなり、プールサイドに戻ると、他の利用客の何人かが頭を指差し何か言っている。そうか水泳キャップがないとだめと言うことだ。せっかく入ったが早々に切り上げることとする。受付で今度は「シティタクシーを呼んで欲しい」と片言の英単語と手振りで頼む。何とか伝わったのか、初老紳士が携帯電話を取り出し、私のメモを見て電話をしてくれた。「シティタクシー以外は、泥棒タクシーだからね」とガイドに言われてメモしていたのが役にたった。彼のおかげで直ぐタクシーに乗ることが出来て無事にホテルに戻ることが出来た。ルダッシュ温泉の良い思い出が出来た。
(その2へ続く)


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中欧ハンガリー・オーストリア・チェコ その2
   
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