療養温泉突撃取材第15弾
奥塩原温泉元湯温泉
塩原最古の湯 えびすや    
 2002.06.29


 塩原十一湯と呼ばれる大網、福渡、塩の湯、塩釜、畑下、門前、古町、中塩原、上塩原、新湯、元湯の総称として塩原温泉と呼ばれる。その中でも元湯は、平安初期の承和元年8834年)僧空海により発見されたといわれる塩原温泉発祥の地である。江戸時代には庶民から諸侯に至るまで、元湯を訪れる人々が多く48軒の旅篭屋が軒を並べていた。江戸時代万治2年(1659年)の大地震の際に起こった山津波で、当時7ヶ所湧出していた内6ヶ所が埋没し、北端に位置していた「えびすやの梶原の湯」のみが難を免れたという。「梶原の湯」は、文治2年(1186年)梶原景時、景季が平家に味方をした那須太郎光隆等を討たんとして傷を追い、その折の負傷治療の為入浴したと伝えられる。
 東北道西那須野塩原インターを降り、国道400号線、渓谷の美しい那珂川の支流箒川に沿いさかのぼる。いくつかの塩原温泉の集落を抜け、源三窟を過ぎ2キロも走ると、元湯の看板が出てくる。右折し3.5キロ走ると箒川源流の赤川沿い3軒の宿が見えてくる。私は16年前に温泉入浴に訪れ、温泉巡浴390湯目の宿だったが、もう記憶に無い。


 えびすやは元湯で最も古く、毎年9月17日に開催される「古式湯祭り」には、えびすやの「梶原の湯」を御神湯に稚児行列が塩原温泉郷を練り歩き、分湯式が行なわれる。玄関には3代目大女将佐藤利加子さんが迎えてくれる。昔は部落で管理していたのを、初代佐藤観元氏が譲りうけた。観元氏の夫人は鈴木勘太郎の姉の孝子さんで、昔から政財界人の交流が多かったらしく、ロビーの一角には吉田茂直筆の手紙が展示されている。中央部分は大正末期の建物で、造りが凝っている。今は4代目の佐藤邦男夫妻が大女将を助けている。
 内風呂は檜造りで「梶原の湯」は38.3度の昔から「ラムネの湯」と呼ばれる炭酸泉で、胃腸病、神経痛、切り傷、火傷に効く名湯として知られる。祠を模った湯口から出る湯は無色透明だが、湯船は白濁している。コップがあるので飲んでみると、強い苦味がありとても多くは飲めそうにない。

6分ごとの間欠泉「弘法の湯」は52.0度と熱く、「梶原の湯」よりナトリウム、カルシウムが多いせいか湯ノ花が固まり石灰化して岩風呂の様に見える。どちらも泉質は、含硫黄−ナトリウム・塩化物・炭酸水素塩泉だが、宿のパンフレット記載の「弘法の湯」は硫黄泉、「梶原の湯」は炭酸泉の方が解かりよい。入浴していると女湯から入れるらしく、女湯と書かれたドアが付いている。2度目に入浴した時に、後から入ってきた男性の連れらしいお母さんが、隣から「お父さん。誰か入っているの?」こちらのお父さんは「・・・」と無言。もう一度お母さんから声がかかるが、またしても無言。「誰もいなければ入るわよ」とお母さんと示し合わせていたのだろう。せっかくの楽しみを奪っては申し訳無いので、そさくさと浴室を出る事にする。女湯は小さな「弘法の湯」があるだけで、広い混浴の湯船に入りたくなるようだ。



 夕食は大広間に呼ばれる。先付けにイナゴ・つぶ貝・鶏肉のごぼう巻き、野菜の天ぷらにイカ・オクラのかき揚げ、鱒・ゆば・二色蒟蒻等のお造り、いのしし鍋、わらびの煮物、岩魚の塩焼き、ゆばを油で揚げたたぐりゆば、酢の物、デザートにメロン。1泊2食付土曜日の宿泊で、@8,500税別、正直言ってここまで工夫された料理が出されるとは驚きだ。翌日の朝食には、ここの名物という「温泉おかゆ」が用意された。鰯の甘露煮、ふきやずいきの煮物、納豆、半熟玉子等、きのこが沢山入った味噌汁も美味しかった。



夕食

朝食

 自炊客用の部屋を見せてもらった。6畳の部屋が2部屋、12畳が1部屋で、1名でも受けている。素泊まりで@3,400、半自炊と言って朝・夕にご飯と味噌汁をつけて@4,000。自炊室にはガスレンジ、電子レンジ、水道や鍋などの調理器は無料で貸し付ける。冷蔵庫は共同で使用できる。食料品、調味料などは各自買物に行くか、注文をして宿の人についでに買いに行ってもらう。


自炊棟のキッチン

自炊棟の客室

 自炊客は「糖尿病、痛風、胃腸病、病後回復、アトピーや火傷の効果を求める方が多いです。また食事を自分の病気治療にに合わせて、自由な時間に食べたい方がきます」と大女将が説明してくれる。大正時代には温泉に薬草を混ぜ、胃腸薬として販売していたというから「良薬口に苦し」をそのまま実践できる抜群の即効性ある温泉場だ。

(2002.6.29 取材松野)


旅館すぐ前を流れる赤川
施設のご案内
・収容 60名 和室 15室 
・大浴場(混浴)・婦人風呂
・自炊部あり(湯治客用素泊まり可)
・駐車場完備
予約は直接ご連絡ください
えびすや  
栃木県那須郡塩原町湯本塩原153
TEL 0287−32−3221
FAX 0287−32−3223


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自炊棟の台所


自炊棟の台所

























自炊部の客室






















旅の手帳  2002年1月号掲載の恵比寿屋の記事(混浴のことなど)