奥の細道・日光街道を歩く旅 マツノヒデマサの歩く旅シリーズ
2006年12月6〜7日 
             
奥の細道第18回 田村神社 クリックで拡大

第18回


世の人の 見付けぬ花や軒の栗
 今年最後の奥の細道を歩く旅になるかもしれないと考えながら、新幹線内で予習をする。17世紀の俳諧師の常識として「栗」のことを「身を包む いがは西木の袋哉」のように“西の木”と呼んだそうだ。芭蕉は須賀川の設楽等躬宅の南4〜5軒南に、俳人仲間の栗の木繁る可伸庵を訪れたとき、可伸の穏閑な生活ぶりに共感し、「世の人の 見付けぬ花や 軒の栗」と詠まれた。現在のNTT西側に句碑が残されている。
 大宮で窓外に目をやれば、遠方にひときわ高く雲を冠した富士山の雄姿が見える。宇都宮で日光連山・男体山が。絶好の冬晴れ。続いて、茶臼岳などの那須連山が・・・まるで鳥瞰図を見るようだ。

 JR新幹線郡山駅9時5分着、東北本線に乗り換えて、JR須賀川駅に着いたのは9時15分。駅前左手 へ100m先次の信号を右折する。600mも歩くと釈迦堂川を渡り、10分で県道54号線須賀川三春線に合流し左折し守山方面へ向かう。芭蕉は、乙字ヶ滝を見た後、現在の水郡線に沿って、「小作田」を経由し て「守山」へ入ったらしい。9時40分、江持橋で阿武隈川を渡る。30分ほどリンゴ園と雑木林を縫った県道を黙々と歩く。かつて車で周り入浴した守屋温泉(七海荘)方面を左手に見ながら、郡山市へ入る。

奥の細道第18回 萬年山長興寺  このあたりの家々の軒下には、漬物用の白菜が干される冬支度の風物詩。1.2kmで水郡線の踏切を越し、 T字路を左折すると萬年山長興寺、手前右に薬師堂がある。冷たい北風が吹き、ジャンバーを着て寒さをしのぐ。
 しばらく平行していた国道49号線と合流した信号「山中」の角が田村神社だ。東口の95段長い階段を上る。 階段に舞い散る枯葉が模様のようで美しい。南側からの階段が正面らしく、階段の厚みが高い。古く大元帥明王を祀る堂々とした社殿で寛文11年(1671年)禅宗仏堂に再建された。田村神社奥の細道を歩く第18回 田村神社厨子は県指定重文で、芭蕉ら はここで数々の社宝を見ている。高台全体が境内で相当広い敷地である。

 ここから郡山市内へ向かうが、途中リサイクルショップ「アメ商道具百貨守山店」に立ち寄る。奥に絵画や骨董品が陳列し日本画 に目が留まる。画風がどこか見たような気がして画家のサインを見ると「巌」と読める。河合玉堂の門下の「山下巌」画伯ではないか。店員さんに出自を聞いたが解らないとのこと。(※後に自宅に帰ってから確信を得て購入することになる)

 さて、11時48分金屋バス停前を通過、10分後中華店で昼食を済ませる。御代田橋を渡り、阿武隈川を 越える。左手に会津磐梯山が見えるはずだが、あいにく曇って見えない。奥州街道「県道355号」は次の信号「日出山」だが、先の国道49号線右手にある「長寿の湯」温泉に立ち寄るため、回り道をする。
 12時45分、スーパー銭湯 郡山「天然温泉 長寿の湯」は源泉32.1度のナトリウム-硫酸塩・塩化物泉で種々の浴槽がある設備のよい施設。ラジウムを放射すると言う「北投石」を浴槽に設置している。 温泉は加温・循環・塩素殺菌で温泉にこだわる人には物足りない。郡山市外に入り、「芭蕉通り」に行くのに本町通(旧奥州街道)のマルキ電気で道を尋ねる。若旦那が「郡山まちなか探検MAP」を渡し てくれ、丁寧に教えてくれた。芭蕉通りは今はそれらしき雰囲気は無い。JR郡山駅西にある善導寺と総鎮守の安積国造神社に立ち寄る。旧奥州街道に戻り、総産土阿邪訶根(そううぶすなあさかね)神社に立ち寄る。境内に源頼義・義家が奥羽平定をした後の治暦3年(1067年)、戦死者を弔うために建立したとされる「高さ2.4 mの曼荼羅の碑がある。ご神木の欅の巨木は大人が5〜6人が両手を広げたほどの大きさ。

 3.2kmも行くと本栖寺(ほんせいじ)を経て、普賢坂の松並木、さらに向山の松並木に出る。向山 松並木入り口には地蔵・馬頭観音像などの石碑群が立つ。碑には享保10年とか文久元年の刻が見られる。JR東北本線の高架を過ぎると左折して日和田駅に出る。芭蕉が「桧皮(ひわだ)の宿」といった場所だ。もう薄暗く今日はこのあたりが潮時か。15時50分、駅前にある日和田公民館内の「高倉人形資料館」を見せていただいた。古浄瑠璃から移行したからくり文楽人形で頭が51個残っている。明治末まで高倉地区で上演されていたが、今は伝統芸能として残っていない。
 今日はこれで郡山市内に戻り、ビジネスホテル増花に投宿する。宿泊料金はシングルで4,500円、夕食は居酒屋で済ます。

 翌7日、JR郡山駅を6時31分に発ち、日和田駅に6時37分に着く。日の出がまだで薄暗い。
奥の細道第18回 安積山公園 クリックで拡大 「あやや姫 と佐世姫伝説」の残る西方寺蛇骨地蔵堂がすぐ左手に、間を置いてすぐ県重文の木造大日如来坐像が安 置されている西方寺本堂がある。800mも行くと左手に小高い小山「安積山(あさかやま)公園」に着く。芭蕉が「ハナカツミ」の花を捜し求めた地である。りっぱな赤松と桜の木が植樹されている。頂上 には展望台があり、那須連山や安達太良山などの眺望が望める。
奥の細道第18回 安達太良山 クリックして拡大「ハナカツミ」はアヤメ科の「ヒメシ ャガ」で昭和49年に郡山の市の花に指定された。今日は寒く畑の水溜りは凍り付いている。左手に雪を 冠した安達太良山を望みながらの歩きとなる。身しらず柿がたわわに実をつけていて、流石に何個か朽ちて地面に落ちている。カラスが実をくちばしで突いたまま飛んで行く姿を見ることがあった。ここで一句
「身知らずの 柿朽ち落ちる 安積山」(マツノ)


 小一時間ほど歩くと、本宮宿上町でクランク状に曲がった角に土蔵造りの立派な堂々とした家屋がある。背後には安達太良神社が高台に見える。9時45分大玉村の集落に入り、足腰が痛み鈴木春儀商店前のベンチで休憩、足揉みをする。二本松市に入る手 前にある薬師堂(東光庵)に寄る。坂の小道を登った相当高いところで、階段は163段もあった。意外に 大きいお堂で鐘楼もある。このあたり一帯は雑木林のなかで枯葉が積もり、カラスが鳴きまるで「時代劇 子連れ狼」の世界。
 JR杉田駅を過ぎて約1.8kmの信号「高越」を右折し、旧道を行く。東北自動車道に つながる国道4号線の高架をくぐると、もう二本松市内へ入る。若宮2丁目の北西400mに藩主丹羽家の菩提寺大隣寺、北へ1kmに戊辰戦争で悲劇的な結末を迎えた二本松城跡(別名・霞ヶ城)・霞ヶ城公園がある。全国的に有名な菊人形展(10月1日〜11月23日)の会場だ。また二本松のちょうちん祭り(10月4日〜6日)も豪快な祭りだ。
 旧奥州街道は、次の信号を右折。突き当たりの二本松神社を右折しすぐ左折。この通りに老舗の和菓子屋が3軒あると聞き、そのうちのひとつ明治21年創業の「日夏」に立ち寄った後に、空腹のため駅近くの「うなぎの半沢」に飛び込んだ。柔らかくとろけるようなうなぎは、極限の体力に強烈に沁み渡る。旅は年を越え2007年へと続く。
 


第17回 矢吹〜須賀川 を読む

第19回 二本松〜福島 を読む
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奥の細道第18回 長寿の湯

長寿の湯

奥の細道第18回 安積国造神社
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奥の細道第18回 総産土阿邪根神社
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奥の細道第18回 普賢坂の松並木
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奥の細道第18回 地蔵・馬頭観音像
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奥の細道第18回 からくり文楽人形
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奥の細道第18回 薬師堂(東光庵)
薬師堂(東光庵)

奥の細道第18回 二本松神社
二本松神社

     
  
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