マツノヒデマサの温泉取材記
鵜原温泉 鵜原館 取材記

鵜原温泉 鵜原館
(千葉県勝浦市)
ホテル詳細

●温泉泉質 16.8℃ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩・冷鉱泉(加温・循環・塩素殺菌)
●温泉効能 神経痛、筋肉痛、関節痛、打ち身、慢性消化器病、痔疾、冷え性、慢性皮膚病、やけど、慢性婦人病など

与謝野晶子ら文人に愛された美しい“鵜原理想郷”に湧く秘湯

 2005年12月8日〜9日にかけて、かねてから行ってみたかった鵜原温泉に出かけた。外房線大原駅で下車し、平安時代建立と言われる不動明王をご本尊とする茅葺の大聖寺を訪ねる。大原駅に重い荷を預けるところが無く、交番のおまわりさんに頼んだが、断られた。大原公園の一角にあった大聖寺は、青空に映える素朴な不ぞろいの緩やかな曲線が美しい。大原は、椿の里、源氏ぼたるの里、大原はだか祭りで有名だ。

鵜原温泉 鵜原館 トンネル 勝浦駅の西隣の駅、鵜原駅で降り、右折してすぐに左折し二つのトンネルを抜けると港が見えてくる。その手前を右折するともうそこは鵜原温泉の敷地、1万5千坪ある原生林だ。鵜原周辺の海岸線は、太平洋の荒波に浸食された断崖が美しい景色を作り上げ、与謝野晶子ら多くの文人墨客を引き寄せてきた。登りつめたところが玄関で、本館・南館・西館からなる。
 鵜原温泉の一軒宿「鵜原館」のフロントで気さくな女将さんが出迎える。一人だったので本館の山側の小さい部屋だったが、空いている南館の大きな部屋「磯香」に替えていただいた。上がり間2畳にドレッサー付、本間は10畳床の間・バス・トイレ付、周りが広縁に応接セット付という豪華さ。2面のガラス張りの眺望は間近の漁港や太平洋が遠望できる。
鵜原温泉 鵜原館 南館和室
 本館の大波、小波、白波、黒浪など海側の部屋を見せていただいた。いずれも本間に籐椅子のある広縁付で眺望に優れている。全室ウォシュレットトイレなのもうれしい。 本館二階に資料館があり、そこでしばしこの地、鵜原理想郷、鵜原温泉の勉強をする。大正13年、鵜原の地に別荘開発の事業をしていた後藤杉久氏の弟後藤初久氏が鵜原で初の旅館業を始める。現当主後藤初久氏は三代目になる。女将の後藤米子さんは千葉市から嫁いで30年。創業八十余年になり、温泉旅館としてはまだ十数年という。
 
 温泉は16.8度のナトリウム-塩化物・炭酸水素塩・冷鉱泉で無色透明・無臭、微弱塩味。湧出量は毎分80リットルで加温・循環式・塩素消毒で塩素臭が多少気になる。効能は神経痛、筋肉痛、関節痛、運動麻痺、打ち身、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え性、火傷、慢性皮膚病、慢性婦人病など。

鵜原温泉 鵜原館 トンネル風呂 トンネル風呂の男性の時間が15時から23時まで(女性は5時から10時まで)というので、まずそこへ行ってみる更衣室の7mもある梁が見事だ。手前の階段を八段下りて右手の背の低い入口から入る。狭いトンネルを10mほど抜けたところに浴室がある。トンネルも浴室の壁も手堀りの跡がくっきり。浴室は洞窟の一部、海側の上部を小屋掛けした形で三面をガラス張りにし、海岸への眺望が素晴らしい。16時30分頃から夕陽が沈みかけ、岬に届くと一気に姿を隠してしまった。いや、わずか5分ほどで、一気に沈んでしまった。後にもう一度入浴に訪れた。浴船に立ち上がり、暗闇の海岸に打ち寄せる波の白さがスポットライトを浴びて美しい。
 本館2階の男女別展望風呂からの鵜原理想郷や太平洋の眺望も素晴らしい。洞窟風呂は、男性が5時から10時までの時間なので、翌日朝入浴した。朝3時30分頃、外で放送する音に目が覚めた。どうも漁船団の出港の準備らしい。30分ほど騒々しくがなりたてていたので、女将さんに聞いてみると、「漁の時期により、そういう日があるんです。毎日じゃないんですよ」毎日じゃお客はたまらないが、まあ漁場の風情が感じられてそれもいいか。

 本館2階から通じる洞窟風呂は、やはり入り口の戸が低く、気をつけないと戸に頭を打ちつける。薄暗い更衣室と連なる浴室の壁は、手掘りの跡が生なましくぼんやりとした照明に不思議な世界を見る思いだ。湯船奥の立柱の岩がさらに不思議な思いにさせる。戦時中、水の確保に軍が手掘りのトンネルを掘り伸ばしたのをうまく利用したものらしい。他にトンネルを抜けた西館に行く途中にある貸切露天風呂(有料)がある。梢こしに海を見渡す石作り露天風呂で、湯船の縁が檜造りの柔らかい印象の湯船だ。

鵜原温泉 鵜原館 夕食膳 夕食膳は、お部屋に届けてくれた。サザエの肝、鯵のなめろう、金目の味噌鍋(白菜・ネギ・金目鯛・もち・うどん入り)、海老入り里芋団子、海老・鯛・鯵・鮪・サザエの御造り、茶碗蒸し、スズキのカルパッチョ、香の物、味噌汁にご飯、デザートにメロンなど。女将さんに「宿の一番の自慢は?」と聞くと、「新鮮なお魚を使ったお料理です」と即座に言い切ったことだけのことはあり大満足。朝食に出された大振りの鯵の干物も実に美味しかった。
 眺望に恵まれたこれほどの神秘的な宿は始めての体験だった。夏は海水浴場が近く、賑やかになりそうだが、オフの時期は、宿の方には申し訳ないが、閑静で優雅な別荘気分で過ごせる癒しと文化の香りのする宿である。
(2005年12月)


鵜原温泉 鵜原館
(千葉県勝浦市)
ホテル詳細

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