マツノヒデマサの秘湯・異色の温泉宿取材記

木曽五木に囲まれた鹿の湯温泉
かもしか山荘
 

 2002年4月27日、私にとって記念すべき日となった。この温泉宿が、日本全国の温泉宿巡浴1000ヶ所目となったからだ。25年前に旅行業界に入り、誰にも負けない情報を持とうと始めた温泉巡浴だったが、ついに記念の数に到達した。

 旧中山道木曽福島から1泊2日の予定で、野尻宿まで歩いたときの宿泊宿だ。長野県木曽郡、中央線大桑駅から木曽川を渡り、山奥に20分ほど入った所だ。最初こそ看板があったが、奥に行けども行けども看板が無く、なんどか地元の方に本当にこの道に間違いがないか確認した。木曽川の支流小川に沿って、木曽五木に囲まれた1軒宿が見えた。
 もう標高830mと午後5時過ぎとはいえ、相当肌寒い。昔、傷ついたカモシカが、この湯に浸って傷を治した所から、鹿の湯となったという。かもしか山荘は以前、現地の上流にラジウム泉「鹿の湯」の名で古くから湯治場を開いていた人が廃業したので、国道沿いで食料品店を開いていた古瀬更一さん(79歳)が、昭和46年5月この地に開業した。今は二代目洋さんと若女将のみはるさんが初代のご両親と切りまわしている。玄関に入ると、かもしか、熊のはく製や蜂の巣などが迎えてくれる。
 若女将の案内で平成4年に建てられた新館すずらんの間に通される。
 「ここはまだ寒いので、コタツを用意しています」

「4月から露天風呂が利用できます。今なら貸し切りで、いいですよ。内側から鍵をかけてください。」と言うので、早速同行の妻と出かける。
 駐車場の手前にある丸太の柵に囲まれた所が、露天風呂らしい。正面の黒い布に被われた入口の留め金をはずして中に入る。これは大きい。3〜4mのだ円形の岩で組まれた湯船で、中央に屋根がかけられている。無色透明だが、底は赤い鉄分のような色がついている。鉄分の湯の華や、おぼれた虫が浮いていたり、野趣に富んだ露天風呂だ。妻との混浴といい、1,000湯目入湯にふさわしい幕開けか?
 つい調子に乗り、Vサインの記念写真を撮ってもらう。後で内風呂にも入ってみた。さわらと高野槙の浴槽で、横1m縦1.5m高さが1mと深い湯船だ。入浴時間が午前7時から午後9時までとなっている。



神経痛、婦人病、心臓病、高血圧、切り傷、運動器障害、動脈硬化症など、飲用として胃腸病などの消化器系の病に効能がある。
 源泉は3キロ山奥から引いてくる、9.7度の単純二酸化炭酸冷鉱泉で、無色透明。かもしか山荘の入口にある大きな石臼に注がれる清水がそうか。




              
 夕食は食事処で、山ならではの地の物をふんだんに使った山菜料理と鴨料理がメインらしい。タラの芽の味噌和え、こごみの胡麻汚し、里芋とわらびの煮びたし、ほうれん草しんじょのあんかけ、川鱒と鴨のたたき、タラの芽と椎茸の天ぷら、鴨鍋、鴨肉・生竹の子添え、デザートにメロン。こんな山奥に数々の鴨料理が賞味できるとは。
収容は8部屋のみで、トイレは共用で、部屋の設備は決して良いとは言えないが、清潔で気持ちが良い。これほどの野趣に満ちた環境で、鴨三昧が出来て、宿泊料金は@9,000〜10,000円と納得できる料金だと思う。かもしか山荘の名は、鴨と鹿から取ったとも言えそうな鴨と鹿に縁の深い宿である。(2002.5.9)


宿予約は下記に
かもしか山荘
木曾郡大桑村殿小川
TEL 0264−55−3422


温泉巡浴1000湯達成を記念して


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