温泉浪漫の旅―文学に登場する温泉をご紹介いたします


挿絵:金森 達
文学を訪ねる温泉紀行 
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第10回 別所温泉(長野県上田市)

別所温泉は清少納言の「枕の草子」に「七久里(ななくり)の湯」と書かれるほど歴史の古い温泉である。塩田平は、鎌倉時代の文化財的な寺院建築物が残り信州の鎌倉と呼ばれている。真田幸村の隠し湯「石湯」、慈覚大師が入浴したといわれる「大師湯」など外湯でも有名。善光寺の南向きに対する北向観音が近くにあり年間を通じて参詣客が多い。別所温泉にある愛染明王堂前にある大かつらからヒントを得たという川口松太郎の「愛染かつら」は、昭和13年「旅の夜風」を主題歌として映画化された。上田市出身の久米正雄は、「父の死」「不肖の子」「路傍」などの作品に別所温泉を描いた。池波章太郎は「真田太平記」で幸村と向井佐平次が出会うシーンに岩風呂の石湯を舞台に描いた。有島武郎は、大正5年夏、妻の死の傷心を癒すために柏屋別荘に滞在した。後に「信濃日記」で「別所はいい湯だった・・・湯嫌いな私にもなつかしまれる湯の匂いが私の心を和やかにしてくれた」と述懐している。川端康成の「花のワルツ」、船橋聖一の「木石」もこの宿から生まれた。


《別所温泉の宿》

信州別所温泉 花屋 旅と温泉の相談室花屋(長野県上田市)
1917年創業、6500坪を超える広大な敷地に建つ老舗旅館。近大正時期の宮大工が造り上げたという純日本建築の建物は、文化庁登録有形文化財に指定されています。
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秘湯・異色の温泉宿

《INDEX》

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